Vol.12 未来の養豚獣医師育成を目指して 新井佐知子

2018年09月13日

はじめまして。麻布大学獣医学部の新井佐知子と申します。
私の所属する麻布大学は創立128年の歴史ある大学で、神奈川県相模原市にあります。動物についての勉強ができる獣医学部と、人や環境の勉強ができる生命環境科学部の二つの学部に分かれています。

私の所属する研究室は「産業動物内科学研究室」といって、牛と豚の内科学を中心に産業動物の獣医学を教育、研究しています。獣医学部といえば、どこも小動物臨床のイメージが強い傾向にありますし、実際に大学卒業後は犬猫の動物病院に就職する学生が半分くらい(当大学の傾向)なのですが、麻布大学は関東に設立した獣医学部の中でも比較的産業動物獣医師の教育に力を入れております。
麻布大学卒業の先輩獣医師には豚の業界で有名な先生も多いですし、私の所属する研究室出身の教え子たちにも数人、現在も豚の業界でがんばっている獣医師がいます。このことは私にとって大変誇らしく、また、とっても嬉しいです。

麻布大学で学ぶ獣医師の卵たちといえども、実際に豚を触ったり、養豚場の中に入ったりしたことのない学生ばかりです。私はそのような学生たちに豚という生物の面白さや、日本における養豚の現状、豚肉の素晴らしさ、そして、豚を取り巻く疾病のコントロール方法の紹介などを授業や実習に取り入れて、将来、一緒に豚の業界を盛りあげてくれる若手獣医師の育成に力を入れています。
私自身も、麻布大学の教員になる前は、NOSAI千葉で産業動物の臨床獣医師をしていました。先輩の獣医師と一緒に考えながら疾病をコントロールできて農家さんに感謝されてとっても嬉しかった事や、自分の知識や技術が足りずに悔しい思いをした日々の連続でした。本当に毎日が忙しくて楽しく、充実していました。国家試験で覚えていたつもりの病気の知識をすっかり忘れ、逆に現場に出てから教科書が手放せなくなりましたので、学生には国家試験が終わっても教科書は捨てるな!と言っております(笑)。

近年、養豚の世界では古くから知る病気に加えて新しい疾病の襲来、さらには無くなったはずの疾病の再来など、日本に限らず近隣の諸外国の情報がめまぐるしくアップデートされる現状です。
このような現状をしっかり学生に伝え、これからも養豚の世界へ新しい力をどんどん送り込んでゆく所存ですので、養豚業界の先輩の皆様、何卒よろしくお願いいたします!!