Vol.11 ピッグフロー:強力な疾病対策 石関紗代子

2018年08月10日

P-JETメンバーブログへようこそ!
有限会社サミットベテリナリーサービスの石関紗代子と申します。
私は大学を卒業してすぐに今の会社に就職し、現在まで養豚専門のコンサルタント獣医師として、全国の養豚場を訪問しながら経験を積ませていただいています。
養豚コンサルタント獣医師の仕事は多岐にわたり、疾病への対応や、予防衛生(疾病モニタリング、消毒プログラム、ワクチンプログラム)だけではなく、飼養管理(交配手順なども含め)について、栄養について、換気管理について、豚舎設備について、品質管理システム(HACCP、GAP、5S)そして、教育について、経営についてなど、養豚場にかかわる様々な知識を磨く必要があり、とてもやりがいのある仕事です。

今回は、全国の養豚場で疾病対策を行っていて、強く感じていることをお話ししたいと思います。
それは「ピッグフロー」の重要性です。ピッグフローというのは、文字通り「豚の流れ」。つまり、豚を、発育ステージに従って何頭ずつグループ分けし、どのような順番で部屋に収容していくか、次の豚が入ってくるまでにどのくらいの空舎期間を取るかなどという、施設利用と豚の移動パターンを指します。

ここで、感染症対策として何をするか?を考えてみましょう。
薬は病原細菌に作用したり、症状を抑えることができます。ワクチンは(製品によりますが)症状を軽減することができます。
一方、ピッグフローは、病気自体を養豚場から無くせる可能性がある手段です。つまり、養豚場にいる豚の間で、感染が広がらないようなピッグフローを作り上げることで、病原微生物を養豚場から追い出すことができるのです。
PRRS対策でも、オールイン・オールアウトができるようにピッグフローを整えることが、成功の重要なカギになります。撲滅を目指す場合でも、コントロールを目指す場合でも同様です。PRRSはワクチンも完璧ではなく、また、直接的にウイルスを殺すような薬もないからです。

具体的に、どのようにピッグフローを整えていくかは農場の施設によって異なりますので、正解は一つではありません。しかし基本を押さえながら組み立てていくことで、PRRSのみならず、他の慢性疾病に対しても大きな効果を発揮することができます。P-JETのバイオセキュリティ査定ツールBioAsseT(バイオアセット)の中に、ピッグフローに関する査定項目が複数出てくるのは、やはりピッグフローがとても重要だからです。ピッグフローへの投資、設備投資は、費用対効果の大きい疾病対策です。

これからも、豚の健康状態と農場の経営をより良い方向に導けるヒントをアドバイスできるように、精進してまいります。
P-JETともども、どうぞよろしくお願い致します。