Vol. 3 この10年におけるPRRS対策の変化 水上佳大

2017年11月07日

皆様、こんにちは。(有)あかばね動物クリニックの水上佳大です。私が入社して10年が経ちました。この10年間のPRRSに関係する話題を振り返ってみたいと思います。

入社した2007年頃にはすでにPRRSが呼吸器系疾患の根幹の一つだと認識されていました。モニタリングや病性鑑定のためにELISA検査やPCR検査は実施されていました。一方で遺伝子シークエンスは現場レベルではほとんど実施されていなかったと思います。現在では遺伝子情報に基づいた系統樹やそれらに基づいた防疫対策も実行されています。

また、その頃最も問題となっていた疾病はPCV2です。ワクチンは国内市販されておらず、PCVADによる甚大な被害が続いていました。ワクチン以外の対策方法として注目されたものは「マデックの20原則」です。これはPCV2といった特定の疾病に対してだけではなく、あらゆる感染症に対する飼養管理上の注意点をコンパクトにまとめたものです。私が農場内防疫に対して最初に知ることとなった資料になります。今でも注意すべきことが多く、20項目すべてを遵守している農場はそれほど多くありません。農場防疫について更に細かく分類され、現場で活用できるようになったものとして、P-JETで作成した「BioAsseT」があります。PRRSに特化した項目もありますが、全ての感染症に対する飼養管理の診断ツールとして機能しています。各国でも同様の診断ツールがあることから、世界的にもバイオセキュリティの診断は重要視されています。

 地域防疫についてもこの10年で進化しています。以前はあった家庭同士の“近所付き合い”は以前より関係が希薄になっています。養豚場間でも新たな疾病の発生などから関係性は薄くなっていました。その一方で2010年口蹄疫や2014PEDの発生などによって、農場間の結びつきの強化が重要視されるようになりました。養豚場だけでなく関係機関との連携も十分とは言えない状況でした。そのため、地域が一体となって取り組みが始まっています。例えば、PRRS対策の組織発足、緊急情報の共有、地域内獣医師の連携などです。諸外国から始まりましたが、国内でも全国的にも増えています。

 この10年だけでもこれだけ大きな変化がありました。これから先10年もさらに変化していくと思います。またPRRS対策もより良く改善されていくことを期待してください。